Microsoft Accessは、長年にわたり多くの組織でデータベース管理ツールとして利用されてきました。しかし、そのサポート終了が迫っており、今後の対応策の検討が急務となっています。同時に、多くの企業で日常的に使われているExcelでのデータ管理にも、ビジネス規模の拡大や複雑化に伴い限界が指摘されています。
本記事では、Accessサポート終了がもたらす影響と代替案、そしてExcel管理を続けることによる課題と、それらを解決するための方法について詳しく解説します。
Microsoft Access サポート終了に備える:代替となるソリューションの主なタイプ
Microsoft Accessのサポートは2025年10月14日に終了予定です。この日以降、Microsoftからのセキュリティ更新やバグ修正、技術サポートなどが提供されなくなります。これにより、セキュリティリスクの増加(データ漏洩やサイバー攻撃への脆弱性)や、システムの不安定化、新しいテクノロジーとの互換性不足といった課題が生じます。これらのリスクを回避し、業務を継続・発展させるために、代替ソリューションへの移行検討が不可欠です。
Accessの機能を代替・拡張する主なアプローチは以下のタイプに分けられます。自社の状況やニーズに合わせて検討しましょう。
Microsoft Access 代替ソリューションの主なタイプ
- 既存のMicrosoft環境を活かす
既にMicrosoft製品を利用している場合に適しています。最新バージョンのMicrosoft 365へアップグレードし、Microsoft 365に含まれるノーコードやローコードは、プログラミング知識が少なくてもカスタムアプリを開発でき、Accessの代替として有力です。
- より本格的なデータベース管理システム (DBMS) へ移行する
Accessよりも大規模なデータ管理、高い信頼性、拡張性、セキュリティを求める場合に適しています。
例:Microsoft SQL Server (エンタープライズ向け)、MySQLやPostgreSQL (オープンソースで高信頼性・拡張性)、SQLite (軽量)、Firebird (高性能)、FileMaker (ユーザーフレンドリー)。
一般的に安全性や信頼性が高いとされています。
- クラウドベースのツールやサービスを利用する
オンラインでのデータ管理、場所を選ばないアクセス、スケーラビリティ、可用性を重視する場合に有効です。
例:Google WorkspaceのGoogle Sheets/Forms (シンプルなデータ管理)、F-RevoCRM (CRM特化)、専門クラウドデータベースのAmazon RDSやGoogle Cloud SQL (スケーラビリティ・可用性に優れる)。
- カスタム業務システムを内製しやすいローコード/ノーコードツール
プログラミング知識がなくても業務システムを比較的容易に開発したい場合、特にIT人材が不足している状況で有効です。Accessでカスタム業務システムを構築していた場合に適しています。
例:Pleasanter、F-RevoCRM。
業務の属人化解消、データの一元管理、メンテナンス性向上などが期待できます。
- 独自の要件に完璧に合致させるオーダーメイド開発
企業の非常に独自の、複雑なニーズに100%適合したシステムを構築したい場合に検討されます。既存システムとの密な連携や業務の完全自動化を目指す場合に有効です。高いカスタマイズ性とセキュリティ・管理の完全なコントロールが可能ですが、高い初期コスト、長い開発時間、メンテナンス負担が発生します。
代替案を選択する際は、必要な機能性、全体のコスト(移行、ライセンス、運用)、ユーザーの使いやすさ、将来的な拡張性(スケーラビリティ)、必要なセキュリティレベル、そしてサポート体制などを総合的に評価することが重要です。
移行プロセスでは、データの評価、変換、インポート、検証を計画的に行い、ユーザーが新しいシステムをスムーズに利用できるよう、トレーニングやサポート体制も整える必要があります。
Excel管理を続けると発生する問題点
多くの企業でデータ管理に使われているExcelですが、ビジネスの規模拡大やDXの時代において、いくつかの重要な課題が浮き彫りになっています。
- 業務のブラックボックス化・属人化:複雑な関数やマクロを使ったExcelファイルは、作成した担当者しか理解できず、その担当者が不在になると業務が滞るリスクがあります。
- 管理の煩雑化:ファイル数が膨大になり、社員のパソコンやフォルダに ばらばらに保存してしまうと、必要な情報を見つけるのに時間がかかり、業務効率を低下させます。バージョン管理も煩雑になります。
- データ量増加による動作の遅延:管理するデータが増えるとファイルが重くなり、Excelの動作が遅くなることで作業効率が落ち、ストレスの原因となります。
- セキュリティリスクと権限管理の課題:Excelファイルは共有や複製が容易なため、機密情報の漏洩リスクが高まります。また、詳細なアクセス権限設定が難しく、セキュリティ上の課題が生じます。
- ファイル破損のリスク:ファイルサイズが大きくなるほど破損するリスクが高まり、重要なビジネスデータが失われる可能性があります。
- 他システムとの連携の制限:Excelは他のシステムとのリアルタイムなデータ連携が困難であり、ビジネスプロセスの自動化を妨げる場合があります。
脱Excel管理のメリット
Excel管理の課題を解消し、より適切なITツールに移行することで、以下のメリットが得られます。
- 属人化の解消:ツールを導入することで、特定の担当者や複雑な設定に依存しない情報管理が可能となり、引き継ぎの負担も減ります。
- 必要な情報へのアクセス性の向上:社内に散在していたファイルを一元管理できるため、ファイルを探す手間が省け、必要な情報に素早くアクセスできるようになります。
- 情報共有の容易化:ファイルの作成・共有・確認といった手間が減り、リアルタイムでの情報共有が容易になります。
- データの一元管理が可能になり、データの重複や更新漏れを防ぎやすくなります。
Excel管理から脱却するタイミング
以下のような状況に当てはまる場合、Excel管理からの脱却を検討すべきタイミングと言えます。
- 業務量が増えてきたとき:扱うデータが増え、ファイルが重くなったり、必要なファイルが見つかりにくくなったりして、業務効率が低下している場合。
- リモートワークを導入したとき:情報共有やマニュアル参照が難しくなり、業務の停滞が発生しやすい状況を改善したい場合。
- 人的ミスが頻発してきたとき:Excelの操作の分かりにくさや属人化された管理方法がミスの根本原因になっている可能性がある場合。
Excelからの移行先と脱却のためのステップ
Excelからの移行先としては、目的に応じて様々なITツールが考えられます。情報共有・管理に特化したツール、データベースシステム、ローコード/ノーコード開発ツール、クラウドベースの業務管理ツール、またはオーダーメイドのシステム開発などがあります。ツールの選定にあたっては、自社に必要な機能を洗い出し、多機能すぎず、社員が使いこなせるかどうかも考慮することが重要です。
Excel管理からスムーズに脱却し、新しいツールを定着させるためには、以下のステップを踏むことが推奨されます。
- 現状の管理業務を棚卸しする:Excelの利用用途、データ量、必要な機能などを詳細に分析します。
- 業務に合ったツールを選ぶ:棚卸しの結果に基づき、自社に必要な機能を過不足なく備えたツールを選定します。
- 段階的な移行計画を策定し、移行期間を設ける:全ての業務を一度に移行せず、優先度の高いものから順に、テスト期間を設けて進めることでリスクを抑えます。
- 組織的な変更管理とトレーニングを実施する:新しいシステム導入の意義を共有し、従業員への十分なトレーニングとサポート体制を整えます。
まとめ
Microsoft Accessのサポート終了は避けられないリスクをもたらし、またExcel管理もビジネスの成長と共に限界を迎える可能性があります。これらは単なるツール変更ではなく、企業のDX推進における重要なステップです。
自社の現状を正確に把握し、将来的なニーズを見据えた上で、適切な代替案や移行先を選定し、計画的に移行を進めることが、業務効率の向上と競争力の維持に不可欠です。
最後に
「DXしていきましょう」「変革を進めましょう」とは言っても、DX推進を担うIT人材が不足しているのが、今の日本の現状です。それはどの企業も同じで、人材確保のハードルはかなり上がっていることでしょう。そういった状況下であっても、今回ご紹介してきたようなツールやシステムの導入することで、個々の負担を減らし、別の業務に取り組む余裕を生む効果も期待できます。「いつもの日常業務の中から」「自分でもできそうなことから」でも良いと思います。まず一歩踏み出してみましょう。もちろん進めていく中で、上手く行かないことやつまずくこともあると思います。その際はぜひシステムエンジニアリングまでお気軽にお問い合わせください。課題解決へ向け、全力でサポートさせていただきます。
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